大手NFT市場OpenSeaの元社員がインサイダー取引を行っていたという疑惑に関して、8月19日、元社員側の弁護士は訴訟を取り下げるよう申し立てたことが明らかになりました。
ニューヨーク南部地区地方裁判所に提出された文書には、インサイダー取引とマネロンの疑惑を否定する論述が記載されています。
疑惑が浮上した経緯
6月、米司法省は元従業員Nathaniel Chastain氏に対してインサイダー取引をめぐり訴訟を起こしました
同氏は2021年5月頃、OpenSeaのプラットホーム上で特集されるNFTを選択する役割を担っており、この立場を利用したとの疑惑が浮上したのです。同氏自身が対象NFTの表示前にそれらを多数購入し、掲載により値段が上がったところで購入額の2倍から5倍の価格で売却することで利益を得ていたという一連の流れとなっています。
米司法省は、同氏がインサイダー取引に加え、マネーロンダリングも行なっていたと主張している状況です。
弁護士の見解
Chastain氏の弁護士は今回の申立書でまず、インサイダー取引とみなすには金融市場とのつながりが必要だとしています。
過去の判例などを参照するとインサイダー取引は特に証券や商品取引の文脈で適用されるもので市場の誠実さを損ない、公衆を犠牲にするような形での義務違反と重要な非公開情報の利用を伴うものだと指摘する姿勢を示しており、こうした点を踏まえるとNFTは証券でも商品でもないため、今回の件には適用されないと主張しています。
「政府はデジタル資産分野での先例を設定するために根拠なく拙速な訴訟を起こした。」とも述べていました。
次に弁護士はマネーロンダリングの疑惑についても反論しました。マネーロンダリングが行われていたとみなすためには政府は以下のことを証明しなければいけないと説明しています。
金融取引に関与する財産が違法行為の収益であることを知りながら、その違法行為の収益に関与する金融取引を行った、または行おうとした。
さらに、その取引が違法行為の収益の性質や場所、出所など隠すために設計されているという知識を持って取引した。
今回の事例ではそもそも「特定の違法行為」がないために訴えを棄却するのが適当だと論じているのです。
加えて、米政府はChastain氏がイーサリアム(ETH)ブロックチェーン上の同氏のデジタルウォレットから別の同氏保有デジタルウォレットに暗号資産を送信したことをもってマネーロンダリングを行ったとの申し立てを行っているが、これは隠蔽される取引ではないとも指摘しました。
イーサリアムブロックチェーンはオープンでパブリックなものであるため、取引は記録・公開されており隠匿できるものではないとしています。