本記事では2022年10月19日時点におけるNFTにおける税金の注意点を簡単に整理していきたいと思います。
目次
NFTにおける税金
NFTの税金について、国税庁がタックスアンサーNFTやFTを用いた取引を行った場合の「課税関係」を出しています。以下の例のように、このタックスアンサーではNFTやFTを譲渡した場合には税金の安い譲渡所得になりうることを認めているので覚えておきましょう。
- 譲渡したNFTやFTが譲渡所得の基因となる資産に該当する場合は、譲渡所得に区分されます。 例外的にNFTやFTの譲渡が営利を目的として継続的に行われている場合は譲渡所得ではなく、雑所得または事業所得に区分されることになります。
- 譲渡したNFTやFTが譲渡所得の基因となる資産に該当しない場合は、雑所得に区分されます。
しかしながらNFTにおける課税についてはまだまだ不明確な点が多くあるのが現状です。税金計算のルールは法律で定められているものの、現時点では暗号資産の扱いとは異なり、税法に「NFT」という語は設けられていません。
これらを考慮して次の2点に注意しておきましょう。
①「NFTという語が税法に定められていない ≠ 税金がかからない」ではない
上記でも述べたように、現時点では税法にNFTという語は定められていません。しかしながらNFTには所得税・法人税・消費税・相続税といった税金がかからないかと聞かれれば、その答えはNOになります。
所得税や法人税であれば広く経済的利得を意味する「所得」に対して税金が課されることになるので、税法にNFTという語が定められていなかったとしても、NFT取引によって所得を得たのであれば所得税や法人税の課税の対象になりえる可能性が大きいです。
NFTであってもFTであっても、所得を得たのであれば課税の対象になると認識しておくといいでしょう。タックスアンサーのNFTとFTの定義がわからない、具体的にFTとしてどのようなトークンを想定しているのかわからない、NFTの中にはFTというべきものもあるといった声も聞こえますが、税法の条文は両者を区別していないということです。
税法との関係に関する限りは暗号資産に該当するかどうかの区別は重要ですが、NFTとFTの区別にこだわりすぎないようにしておきましょう。
②国税庁のガイダンスの内容が常に法的に正しいとは限らない、ガイダンスがなくとも申告・納税が必要
国税庁はNFTに関するタックスアンサーを出していますが、これは所得税に関する取扱いのみをカバーするものであること及びカバーする取引の範囲が狭いことから、より詳細なガイダンスが出されることを待ち望んでいる納税者や税理士の方も多くいるのが現状です。
ただし国税庁は行政機関にすぎないため、国会が作った税法のルールを執行しているだけであるのが今の状況なのです。また国税庁も法律から離れた、誤った解釈を述べる場合もあるので注意が必要です。
多彩なNFTに関して、国税庁が納税者や税理士が満足するような詳細なガイダンスを発行できるのかが疑問でもありますが、新たな取引に対して国税庁はどうしても後手に回らざるを得ません。
それでも納税者や税理士は自らNFTの税金を計算して、申告・納税しなければならないのは事実でもあります。
このように考えると普段から国税庁に依存しすぎることなく、税理士その他の専門家に依頼できるようにする、税金に関する記録を付けておく・残しておくなど、適正に申告・納税する体制を整えておくと後々の手間が省けるでしょう。
所得税・法人税
所得税・法人税について、例えば、次の点に注意しましょう。
- NFTを譲渡したり、他のNFTと交換したりすることで、所得が発生し、所得税や法人税が課される。
- 所得金額は、基本的に収入から必要経費を控除して算出するので、収入金額から製作費用、NFTの購入金額、手数料などを控除する。
- 一般の方が2次流通でNFTを譲渡する場合、所得税法上の譲渡所得になる可能性が高まります。クリエイターの方がNFTを販売する場合、事業所得又は雑所得になる可能性が高い。
- 暗号資産や外国通貨でNFTを購入すると、その暗号資産や外国通貨の取得価額とこれらの使用時の時価との差額に対して、所得税や法人税が課される。
- エアドロップ・giveawayによる譲渡や廃品回収業者への譲渡など、無償又は時価よりも低額でNFTを譲渡した場合には、その譲渡した者が、これを時価で譲渡したものとみなされる場合がある。逆に、これらの事由により、無償又は時価よりも低額でNFTを譲り受けた場合には、譲り受けた者も時価で課税される場合があります。
- 2次流通時にクリエイター等が受領するロイヤリティも所得となる。
- 最終的にどのように税金を計算するかはNFTに紐付いている権利や資産の性質に大きく依拠する可能性がある。
- 詐欺などによりNFTを失った場合や送付先アドレスを誤り、いわゆるセルフGOXをした場合に、その損失は必要経費として認められない可能性がある。
- 法人税の期末時価評価課税のような規定はないため、金・プラチナなどの短期売買商品に該当しない限り、期末に保有するNFTを時価評価して課税することはない。
この他にもゲーム用のNFTの取得価額をどうするのか、即時費用化できるのか、減価償却はできるのか、NFT販売時に収益の全額を計上すべきか、NFTの時価をどう評価すべきか、NFTを購入した際の代金支払時に源泉徴収をする必要があるかといった問題も残っています。
消費税
国税庁の見解はまだ出ていないものの、NFTを製作して販売したり、購入したNFTを2次流通で譲渡したりした場合には消費税の課税関係が発生する可能性があります。
相続税・贈与税
相続税・贈与税について、次の点に注意しておきましょう。
- 問題となるNFTは相続人が相続可能なものか。
- 時価をどう考えるべきか。著作権の価値を算定すべきか、それ以外の権利の価値を算定すべきか、その両方か、あるいは資産性のないものか。
- 秘密鍵の紛失等により、事実上、相続人がNFTを取得できないような状況であっても、相続税が課される可能性があります。
もしNFTを贈与したという場合には受贈者側で贈与税が発生する可能性があるので覚えておいてください。
最後に
上記のほか、各税金に共通する注意点として覚えておいてほしいのは、1次流通と2次流通で取引等の性質が異なる場合がある点と、著作権法その他の税法以外の法律関係が税金の計算に影響を及ぼす可能性がある点です。
また専門家によるものも含めると、ネット上には色々な情報があります。中には法的根拠が不明確なものも存在します。筆者の見解とは異なるものも散見されますが、法的に何が正しいかについては、裁判所や立法による決着を待たなければならないという事情があることも理解しておくと良いでしょう。
NFTにおける税金の計算については明らかになっていないことが多くありますし、今後、国税庁がどのような見解を採用するのかを予想することも難しいため、申告する際は税理士に相談することをお勧めします。