9月16日、米ホワイトハウスは暗号資産を含むデジタル資産についての包括的な開発枠組みを発表しました。3月にはバイデン大統領が署名した大統領令を受けて米国の各省庁が調査を行っており、この調査結果が政策方針に反映されたということです。
民間部門の研究開発やイノベーション促進と同時に、リスク軽減のための施策も求める内容となっており、提言は以下の6つの分野で構成されています。
- 消費者・投資家・企業の保護
- 安全で安価な金融サービスへのアクセス促進
- 金融安定性の維持、責任あるイノベーションの推進
- 米国のグローバル金融リーダーシップと競争力の強化
- 不正金融との戦い
- 中央銀行デジタル通貨(CBDC)の検討
消費者保護と金融の安定へ
第1項目ともなっている「消費者保護」に関しては米証券取引委員会(SEC)や米商品先物取引委員会(CFTC)などの規制当局が、デジタル資産分野での違法行為に対する捜査や法的執行を積極的に行うように奨励を行っています。
また、消費者金融保護局(CFPB)などに対しては、消費者から受けたクレームをモニタリングするなどして、不正行為への対応を強化するよう促したということです。また金融リテラシー教育委員会(FLEC)が、消費者にデジタル資産に関わるリスクや詐欺行為について学ぶのを支援するとの旨も明らかにしました。
次に「金融安定化」の項目では、ホワイトハウスが5月のステーブルコイン旧UST暴落と一連の債務不履行について触れました。「デジタル資産と主流の金融システムはますます複雑に絡み合っており、混乱が波及する経路を作り出している」とのコメントとともに、特にステーブルコインにリスクがあるとも述べています。
これを受けて、金融安定監督評議会(FSOC)はデジタル資産が金融安定性に与えるリスクについての議論を始めており、10月には規制提言を行うと発表しています。
さらに米財務省は金融機関のサイバー犯罪に対する脆弱性を特定・軽減する能力を強化し、暗号資産企業が確実な規制ガイダンスを得られるよう動いていくという新たな方針を公開しました。経済協力開発機構(OECD)などの国際機関を通じて、米国の同盟国にもこうした役割を担ってもらう予定となっています。
米財務省は2023年2月までにDeFiに関する不正金融リスク評価を完了させ、同年7月までにNFT関連の評価を完了させる計画です。そのため、バイデン大統領は銀行機密保護法などの関連法を改正し、NFTプラットフォーム含む仮想通貨企業に適用することの必要性について検討することになるでしょう。
デジタル資産開発と環境への取り組みはいかに
「責任あるイノベーション」の項目では技術促進やエネルギー消費問題についての説明が多くされました。まず米科学技術政策局 (OSTP) などがデジタル資産開発研究アジェンダを策定することが明らかになっており、新たなテクノロジーを製品に取り入れるための研究を支援していくということです。
加えて財務省と金融規制当局が新しい金融技術を開発する革新的な米国企業を支援していくことも推奨する点も新たに発表されました。
ホワイトハウスはこの発表について、暗号資産を動かすには大量の電力が必要で炭素排出につながることを指摘しています。その一方でデジタル資産の開発を炭素排出ゼロ経済への移行と足並みを揃えるものにする機会は存在するとの見解も明らかにしました。
これに関連してエネルギー省や環境保護庁などの機関は、デジタル資産の環境への影響をさらに調査し、必要に応じて性能基準を構築することで、環境被害を軽減するためのリソースや専門知識などを提供することも検討していくことになります。
米国の新たな価値観を世界に
「米国の競争力強化」については、国際機関を通じてデジタル資産についての米国の価値観を世界に発信していくと説明しました。国内では商務省がフィンテックやデジタル資産企業の世界市場進出をサポートする予定です。
その他にも国務省などがデジタル資産のインフラを構築することで、発展途上国への技術支援を検討しています。法的規制の枠組みに関する支援をはじめ、デジタル資産のリスクや可能性に関する知識の共有なども考えられるということです。
デジタルドルについては省庁間ワーキンググループが「米国がCBDCを発行することの意味を検討し、政府間で技術専門知識を共有する」ことなどを主導していくとコメントしました。