10月3日、一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(JCBI)は自民党のWeb3プロジェクトチームに対して、NFTビジネスにおける課題整理についての報告書を提出しました。
ブロックチェーン技術を活用した共同運営型のプラットフォームにより、日本のメディア・コンテンツ業界のデジタルトランスフォーメーションを促進するための企業連合がJCBIです。2020年2月には任意団体として7社と共同で発足して以降、様々な業界の企業が参加を表明しています。2022年6月には参画企業は合計40社となりました。
今回提出された報告書は「コンテンツ関連企業へのヒアリングを通じたNFTビジネスの課題整理」という名称がつけられており、政策はJCBIの著作権流通部会が行なったということです。
2022年春に自民党が公開した「NFTホワイトペーパー」と「デジタル・ニッポン 2022」という提言に対応する内容が主に記載されており、JCBIが加盟する21社のコンテンツ関連企業に提言の各項目についてヒアリングを行なったことが明らかになりました。なおNFTの取組みに関する実態調査を行い作成されたものとなっています。
以下の「NFTビジネスの発展に必要な施策」「コンテンツホルダーの権利保護に必要な施策」「消費者保護に必要な施策」という3つのテーマで構成されており、主に次の5つを、取り組むべき内容として指摘しています。
- 事業を阻害しない形での規制の運用
- 国際的イコール・フッティングの確保
- プラットフォーム横断的な共通の取引環境の形成
- 啓蒙の必要性
- 無断NFTへの対応
問題点などについても言及
さらに報告書内では国内でNFTを展開するにあたっての問題や障壁となる部分についても言及しました。
項目は全17項目で、特に注目されている題目は以下の4点です。自民党側の提言と、JCBI加盟企業の「声」が併記される形となっていることで注目を集めています。
- ランダム型NFT販売の賭博罪該当可能性
- 多数発行NFTの2号暗号資産該当可能性
- 暗号資産の期末時価評価による法人課税、仮想通貨取引に係る個人所得課税
- トークン発行に係る審査基準
自民党側はランダム型NFTの販売について、関係省庁から事前に見解を求められる仕組みを整備する旨を明らかにしています。また企業側は事例による明示や、具体例を国から民間に提示してほしいといった要望を述べている形です。
多数発行のNFTについては例示やセーフハーバーを設けるなどして、解釈指針を示すべきと自民党は提言しており、企業側は「不明確性が参入や事業展開の障壁となっている」と主張しました。
NFTの法人課税や個人所得課税に関しては、自民党は個人の暗号資産取引の損益も上場株式等の取引と同様に、20%の税率による申告分離課税の対象とすることも含め検討を行うべきと説明をしています。
加えて発行した法人が自ら保有するトークンは期末時価評価の対象から除外した上で、実際に収益が発生した時点で課税するよう税制改正や取り扱いの見直しを行うべきとしました。
これらの考えに対して企業は「法人税・所得税のいずれも、諸外国の制度と異なる場合には、海外での事業展開の障害となる。」などとの見解を明らかにしている状況です。
課税方針の見直しはいかに
上記にも記載のあったNFTホワイトペーパーは自民党の「NFT政策検討プロジェクトチーム」が作成した提言で、Web3を「デジタル経済圏の新たなフロンティア」と定義しています。NFTがその起爆剤であるという内容をまとめた報告書です。
今年6月、日本政府はWeb3の環境整備を本格化する骨太方針を閣議決定しました。その閣議では「NFTやDAOの利用等のWeb3の推進に向けた環境整備の検討を進める」方針を明言。また8月には金融庁と経済産業省が、企業が自社で発行・保有する暗号資産に対する課税方法を見直す方針を固めていました。
ホワイトペーパーや「デジタル・ニッポン 2022」も、これらの決定に一定の影響を及ぼしたと思われます。